東京大学
国際保健学専攻
生物医化学教室
2.回虫およびC. elegans
生物は独立した生命を持ち独自の生活を営んでいるが、一方他の生物と深い関わりを保ちつつ生存している。寄生現象もこの様な関係のひとつと考えられ、自由生活型の祖先から出発し、寄生生活に移行してからの進化の過程において宿主内の環境に適応し、宿主特異性や臓器特異性をそなえた種々の寄生虫が成立したと考えられる。この点から寄生虫は真核生物における適応現象の研究を進めるうえで極めて良い研究対象であり、特にエネルギー転換系の様な全生物に共通の代謝系の適応や進化、また基本的な反応機構を理解するうえで最適な系のひとつと考えられる。当研究室ではこの様な観点から、寄生虫や大腸菌を用いて酸素適応機構の解明を目的として研究を進めてきた。特にエネルギー代謝における酸素適応機構の解明という観点から生活環の中で好気・嫌気の環境への適応を示す回虫ミトコンドリアをモデル系として研究を進め、ミトコンドリアの複合体II にそれぞれコハク酸酸化、フマル酸還元を触媒するアイソザイムが存在する事を初めて見出した。これらの特徴を明らかにする目的で結晶解析を行なっている。これまでの低酸素適応に関する成果を踏まえ、さらに酸化ストレス、老化や寿命の問題も含め以下のテーマを中心に研究を進めている。
1) 酸素適応における核およびミトコンドリア遺伝子の発現調節機構
2) 複合体II アイソフォームの構造と機能
3) 条件嫌気性細菌のフマル酸還元酵素の解析とロドキノンの生合成機構
4) C. elegans 短寿命および長寿命変異株ミトコンドリアの遺伝生化学的解析
5) C. elegans を用いた遺伝子導入および遺伝子破壊
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