東京大学
国際保健学専攻
生物医化学教室
3.マラリア、トリパノソーマ、クリプトスポリジウム
マラリアは地球上の5 億の人々が感染し、発展途上国の将来を担うべき子供達が数百万の単位で亡くなっている極めて重要な熱帯感染症である。ところがこの様な流行地の国々にマラリアを制圧するための研究を進める余裕はない。ワクチンの開発にまだ時間が必要とされる現状で化学療法は最も効果のある治療法である。しかし細菌における薬剤耐性と同様にマラリアにおいても薬剤耐性マラリアの出現は重大な問題になっておりWHO がマラリアの「根絶」をあきらめ、「制圧」へと目標を後退したのも主に特効薬クロロキンに対する耐性株の出現による。そこで我々は新しい抗マラリア剤の開発を目的として、特に性質が宿主と非常に異なっているミトコンドリア電子伝達系を標的とする薬剤の探索を行っている。マラリアと同様に原虫による寄生虫疾患であるアフリカ睡眠病はヒトの感染に加え、家畜の被害が甚大でありアフリカの政治、経済の混乱の背景となっている。当研究室では病原体であるトリパノソーマに対する化学療法剤についても開発を試みているが、原虫に特有なシアン耐性酸化酵素を特異的に阻害するアスコフラノンを見出し、WHO やDNDi との共同研究を含めて阻害機構、臨床への実用化をめざしている。最近、このシアン耐性酸化酵素がクリプトスポリジウムを含む様々な寄生性原虫に存在する事を見い出し、抗原虫薬の標的として解析を進めている。
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