東京大学
国際保健学専攻
生物医化学教室


6. 古細菌RNA 成熟化の研究

 古細菌は原核生物でありながら、遺伝情報伝達系に関しては、真核生物との共通点を数多く持つ。tRNA イントロンのスプライシング機構もそのひとつである。一方、われわれは、古細菌の、RNA転写後修飾に関わる核小体低分子RNA-タンパク質複合体のホモログの研究から、古細菌のタンパク質遺伝子のイントロンの最初の例を見出した。このイントロンのスプライシングは、われわれの研究から、古細菌のtRNA あるいはrRNA イントロンのスプライシング機構と同じ機構により、進行することが明らかになった。この研究過程で、現在同定されているタンパク質遺伝子イントロンを持つ古細菌には、今までとは異なるサブユニット構造を持つスプライシングエンドヌクレアーゼが存在し、これが、それまで古細菌で見出されていた酵素と、真核生物tRNA イントロンのスプライシングエンドヌクレアーゼと、サブユニット構造および基質認識機構が、ちょうど中間的であることを見出した。われわれは、このヌクレアーゼの更なる解析を進めるとともに、古細菌および真核生物のtRNA スプライシング機構において、未解明である古細菌型および動物型RNA リガーゼの同定を目指している。